ジョグは「体の点検」の時間──僕が走りながら確かめている6つのこと
ポイント練習の翌朝のジョグで、僕が走りながら確かめている6つのこと(呼吸・接地・着地・体幹・腕振り・背中)を、研究でどこまで分かっているかと一緒に紹介します。

前日にポイント練習をした翌朝、疲労を抜くためにゆっくりジョグをしながら、「ジョグのとき僕が何を意識しているか」をポッドキャストで話しました。この記事はその内容を整理し直し、研究でどこまで分かっているかを一緒に紹介するものです。
ジョグは何のために走るか
距離を踏むため、疲労を抜くため。ジョグの目的は人それぞれです。僕はそれに加えて、ジョグを体の状態を確かめる時間として使っています。
ゆっくり走る時間が練習の大部分を占めるのは、速いランナーほど当てはまるようです。Stravaに記録された約12万人のマラソンランナーのデータでは、記録が速い層の8割以上が、低い強度をいちばん多くする「ピラミッド型」の配分で練習していました(Muniz-Pumares, 2025)。ただしこれは記録を見比べた研究なので、「ジョグを増やせば速くなる」とまでは言えません。
もう一つ、僕が大事にしているのは間を空けすぎないことです。休んだ翌日は走り出すのが重く感じますよね。走る前に「走りたいか、走りたくないか」を感じてみるのも、その日の体と気持ちを知る手がかりになります。
1. 呼吸:きつい・楽、鼻とのどの通り
走り出してまず感じるのは呼吸です。きつく感じるか、楽に感じるか。鼻やのどの通りはどうか。
気温や湿度でも感じ方は変わります。7つのマラソン大会の記録を調べた研究では、気温・湿度・日差しをまとめた暑さの指標(WBGT)が高い日ほど、上位男子の記録がコース記録から離れていきました(Ely, 2007)。速くない層ほど影響が大きかったことも報告されています。

暑さの指標(WBGT)とマラソン記録の遅れ
同じペースでも「今日は息が上がる」と感じたら、体調だけでなく天気のせいかもしれない、と考えてみてください。※これは大会記録の研究で、ふだんのジョグを測ったものではありません。
2. 重心と接地:真下〜ちょい前
着地は、無理に前で足を取りにいかないようにしています。僕のイメージは「真下か、ちょい前」です。
研究で確かめられているのは、股関節より大きく前で着地するほど、ブレーキの力が大きくなることです(Lieberman, 2015)。この研究では、すねが比較的まっすぐ立った状態で着地することがすすめられています。真下ぴったりである必要はなく、「遠く前に出しすぎない」が大事だと考えています。

足を前に出しすぎた着地と、体の近くの着地
前に出しすぎを減らす方法の一つが、歩数(ピッチ)を少し上げることです。45名の市民ランナーで、ふだんより歩数を5%上げるだけで、膝が受け止める負担や体の上下動、ブレーキの力が減りました(Heiderscheit, 2011)。ただ、37本の研究をまとめたレビューでは、その根拠はまだ限られていて、故障が減るかどうかは結論が出ていません(Anderson, 2022)。
僕は太鼓の達人のように「ポン、ポン」と自分の中のリズムがあり、そこに足を置いていく感覚で走っています。そこがずれると、狙った反発をもらいにくい感覚があります。
3. どこから着地するか
僕自身は足の中ほど(ミッドフット)で着地し、最後は親指で地面を押して離れるイメージで走っています。ただ、これは僕に合っている走り方で、皆さんにすすめるものではありません。
53本の研究をまとめたレビューでは、かかとから着地する人と、それ以外で着地する人で、走りの効率に差はありませんでした(Anderson, 2020)。かかとで着地する人が前足で着地するように変えると、その場では効率が下がっています。「故障していない人に着地を変えることはすすめられない」というのが著者らの結論です。
また、前足で着地すると膝への負担は減る一方で、足首やアキレス腱への負担は増えることが報告されています(Xu, 2021)。負担がなくなるのではなく、場所が移るということです。
4. 肋骨を開きすぎず、体幹は「少し」前へ
背中を反りすぎると、肋骨が開いて重心が後ろに残りやすくなります。息は吸いやすく感じても、体重がうまく前に乗りにくい。そこで僕は、肋骨を少し絞って、体幹ごと少しだけ前に傾けるようにしています。
研究では、体幹を少し前に傾けると、膝のお皿の裏(膝蓋大腿関節)にかかるストレスが下がり、反らせると上がりました(Teng, 2014)。

体幹の傾きと膝のお皿の裏にかかるストレス
ただし、ここは注意が必要です。前傾は「するほど良い」わけではありません。前傾は負担を膝から股関節へ移す(Braun, 2025)うえに、約8°まで前傾を大きくすると、エネルギーの消費が8%増えたという報告もあります(Carson, 2024)。目安は「反らない・倒しすぎない」。まっすぐ〜ほんの少し前、くらいが現実的だと考えています。
5. 腕振り:肩をすくめない
肩がすくむと、首まわりに力が入りやすくなります。ここからは研究ではなく、僕の臨床での考え方です。肩がすくんでいるときは、首から胸にかけての呼吸を助ける筋肉まで力が入っていることが多い印象があり、お腹にも力が入りにくくなるように感じています。
なので、肩は下げてリラックス。肘から先、手首にはなるべく力を入れないようにしています。肩の緊張と呼吸の関係を走りの中で調べた研究は、今回探した範囲では見つかりませんでした。
腕振り自体には意味があります。腕を振らずに走ると、エネルギーの消費が3〜13%増えました(Arellano, 2014)。

肩を下げ、肘から先の力を抜いた腕振り
6. 背中の硬さを感じる
腕を後ろに引いたとき、背骨がついてくるか。背中が硬いか、柔らかいかを感じながら走っています。
ポッドキャストでは「硬かったらストレッチをしっかり」と話しましたが、ここは少し言い直します。体が柔らかいほど効率よく走れる、という研究結果はありません。むしろ硬い人のほうが効率が良かったという報告が続いています(Craib, 1996/Gleim, 1990/Jones, 2002)。
ですから、背中の硬さは「ストレッチを増やす合図」というより、その日の体の状態を知る手がかりとして使ってください。いつもより硬い、腕を引きにくい、と感じたら、疲れがたまっている可能性もあります。動きそのものが止まってしまうほど硬い場合にだけ、動かす体操を足してみる、というのが僕の考えです。
まとめ
- ジョグは距離を踏むだけでなく、体の状態を確かめる時間にもなる
- 呼吸の感じ方は、天気でも変わる
- 着地は「遠く前に出しすぎない」。歩数を少し上げるのも一つの方法
- 着地の仕方は無理に変えない。変えると負担の場所が移る
- 体幹は「反らない・倒しすぎない」。肩は下げて力を抜く
- 背中の硬さは、その日の体を知る手がかりに
「自分の着地や姿勢はどうなっているんだろう」と思った方は、LINEから気軽に声をかけてください。動きを一緒に見て、どうすればいいかまで一緒に考えます。
※痛みがある場合は無理をせず、医療機関への相談をおすすめします。
理学療法士 大宅良輔 / UESCA Certified Running Coach
参考文献
- Muniz-Pumares D, et al. The Training Intensity Distribution of Marathon Runners Across Performance Levels. Sports Med. 2025. PMID 39616560
- Ely MR, et al. Impact of weather on marathon-running performance. Med Sci Sports Exerc. 2007. PMID 17473775
- Lieberman DE, et al. Effects of stride frequency and foot position at landing on braking force, hip torque, impact peak force and the metabolic cost of running in humans. J Exp Biol. 2015. PMID 26538175
- Heiderscheit BC, et al. Effects of step rate manipulation on joint mechanics during running. Med Sci Sports Exerc. 2011. PMID 20581720
- Anderson LM, et al. What is the Effect of Changing Running Step Rate on Injury, Performance and Biomechanics? Sports Med Open. 2022. PMID 36057913
- Anderson LM, et al. What are the Benefits and Risks Associated with Changing Foot Strike Pattern During Running? Sports Med. 2020. PMID 31823338
- Xu Y, et al. Effects of Foot Strike Techniques on Running Biomechanics. Sports Health. 2021. PMID 32813597
- Teng HL, Powers CM. Sagittal plane trunk posture influences patellofemoral joint stress during running. J Orthop Sports Phys Ther. 2014. PMID 25155651
- Braun L, et al. Managing lower extremity loading in distance running by altering sagittal plane trunk leaning. J Sport Health Sci. 2025. PMID 39251186
- Carson NM, et al. The effect of forward postural lean on running economy. PLoS One. 2024. PMID 38809851
- Arellano CJ, Kram R. The metabolic cost of human running: is swinging the arms worth it? J Exp Biol. 2014. PMID 25031455
- Craib MW, et al. Med Sci Sports Exerc. 1996. PMID 8784761
- Gleim GW, et al. J Orthop Res. 1990. PMID 2213338
- Jones AM. Int J Sports Med. 2002. PMID 11774065